駅近日記

”常に泣きたくなり、常に眠くなり、周りには荒廃と真夜中と酷寒しかないとき、どうやって人生を楽しめばいいのか?”

漫画のこと考えてた週

2022年04月08日~2022年04月14日

 

さよなら絵梨

大学で映画作ってたとき、周りが「俺たちの代でサークル変えていこう」って話してて「わざわざ自分で選んで入ったのに変えるの???」ってなったんですよね。「このサークルの内輪の雰囲気いいよねー」とか話してもいたから”そういうの”を言いたかった/したかったって話なんだとは思うんですが。

でも当時の私は結構ムッとしてて「そっちがその気なら私は内輪ネタを土台に面白いの作るぞ! 」って意気込んで連作ショートショートを撮ったんですよ。「アンケートで私の方が評価よかったら作品の面白さは内輪外輪ではなく脚本とカット割りで決まることを証明できるはず」とか息巻いてた。で、上映会が終わってアンケートを見たら私の欄だけなかったんですよね。アンケート担当に聞いたら「駅近のは上映時間短かったから入れなくてもいいと思って」って言われました。なんか気付かぬうちに土俵から降ろされてた。白けちゃうね。

それがあったから学生が映画作って感想もらってる作品見ると拗ねちゃうんですよね。

 

shonenjumpplus.com

以下、『さよなら絵梨』の感想。

作品の感想って普段あんまり書かないんだけど今回は別。作者ではなく作品で味わうべきだと私は思ってて、でもツイだと誰が書いたか込みでの感想が多かったから書くことにした。作者を軸にした感想は作品にも作者にも失礼だと思うので。

 

『さよなら絵梨』は退屈な漫画だったと思う。コマの使い方とか話の裏側とか考察(最近この言い方好きではない)できる部分はいくつかあったけどストーリー自体はありふれたものに思えた。映画っぽい漫画を読んだなって感じ。貶す意図はまったく無く、全国上映(Twitterのトレンドに載る)よりミニシアター(新人賞)向きだと思った。

登場人物の関係性や不意に出る下品さが合わなかった。これは作風との相性か。

最後の爆発に「フッ」って笑った。力技じゃん!って思ったけど好き。トレンドに爆発オチってあったけど、その書き方は乱暴じゃない? 個人的にはあのオチでクスッとさせるために200ページ書いたまであると思う。オチが爆発なのではなく、198ページ使って爆発のお膳立てをした、みたいな。

コマ割りがフィルムイメージで好きだったけど、動きがなさすぎて後半飽きてしまった。フィルムの部分だからって事実そのままってわけじゃなく、切り貼りや演出があるって分かってからは注意して読むようになった。けど200ページは長い。

大ゴマや見開きは切り貼り以上の編集をした箇所ってことなのかな。合成したり、拡大(都合のいい部分の強調含む)したり、気合い入れた別撮りもあったかも(病院の屋上とか)。最後の廃墟のやり取りも省かれてたり拡大された部分があると思う。体育館での上映は……どうなんだろう。あれにも手が入ってるのかな。(2022/04/11)

純粋に見開きってだけの可能性もあるよね。思い付きが思い込みになるのは違うなって思ったから線引いた。(2022/04/12)

どちらか一辺倒ってわけでもないか。(2022/04/13)

どこまでが映画でどこまでが事実なの? みたいなのも思ったけど、作者の一言でひっくり返るタイプの重箱の隅を突くのは不毛だからやめた。こういうの考えるの好きな方だけどストーリー自体に乗り切れてないから「なんで考察の方が楽しい漫画の考察なんてしないといけないの!?」ってムッとしてる自分もいる。内容より考察に熱を上げたくない。

「創作って受け手が抱えている問題に踏み込んで笑わせたり泣かせたりするモンでしょ? 作り手も傷付かないとフェアじゃないよね」って本当にそうなのかな。受け手と作り手ってもっと距離の離れたものなんじゃないかなって思った。フェアの条件を傷にするのは乱暴だと思う。作り手は作品を作るところまでしかできないし受け手を指定することもできないんだから、受け手が抱えている問題に踏み込めるという考えは傲慢だと思う。受け手が自分の人生に重ねて観る可能性を頭に置いて作る以上のことってできるんだろうか。

病院爆破と最後の爆発でCGのクオリティー違いすぎたのは笑った。時間経ってるもんね。(2022/04/12)

けど他の人の感想読んだらそうじゃない気がしてきた。あれ別撮りをくっつけたのか。「映画を何度も再編集していた理由~」「ファンタジーがひとつまみ~」は違うでしょって思ってたけどその答えも出た。あれも脚本だと思う。映画は時系列通りに撮るばかりじゃない(というか学生映画はバラバラの方が多い)んだからフィルム調のコマ割りで描かれたラストをそのまま未来として受け取るのは安易すぎた。

主人公の目的は映画を完成させることだけど、それは文化祭で完成版を上映することとイコールではないんですよね。あれはあくまでもリベンジマッチ。多分体育館の映像を撮ってから別撮りの廃墟のシーンをくっつけたのかな。そうやって完成した映画が私たちが読んだ『さよなら絵梨』……って捉え方でいいんだろうか。

スマホで撮ってるのにフィルム調のコマ割りなのはなんで?って思ってたけど、あの漫画自体が完成したフィルム『さよなら絵梨』だからフィルム調なのかも。

暗転からの未来編が始まるの、エンドロール後にちょっと続きが流れるやつみたいだった。

ただの趣味で爆発させていた優太が「ヒロインの吸血鬼性を事実のように見せる」ためにひとつまみのファンタジーとして爆発させるという表現意図を獲得するまでの話だったのかもしれない。

後半流して読んでた部分もあったし悪い読者だったかも。

 

作品の捉え方は読むたびに変わってた。あやふやにならないようにまとめておく。

一回目

あの男は主人公本人で、家族も実際に死んでて、あの一室で彼女と最後の撮影をして映画を完成させたのかなって思ってたんですよ。でも最後の爆発で「あれ、これ編集ばっちりしてるやつじゃん! じゃあ主人公たちが一緒にいたのも編集!?ってなった。交互にしか映らなくて変だなって思ってたから腑に落ちた感がすごかった。

多分大人になった主人公とヒロインが一緒に映ってる大ゴマも編集なんだと思う。爆発だけじゃなく編集全体のクオリティーが上がってて、後からあのシーンにヒロインを入れたのかなって。すごく懐かしい話をすると三原慧悟監督の『友達がいない』の最初とかそうですよね。一つの画面に自分が二人いたのと同じやり方。大ゴマ見てたら彼のトークショーのこと思い出しちゃった。

それはそれとして、オチで色々考えられはするけど正直退屈じゃない?とは思った。「映画を何度も再編集していた理由~」「ファンタジーがひとつまみ~」の部分はさっきまでの悩みとズレてる気もして微妙だった。

二回目

「この漫画がフィルム調なのってこの漫画こそが『さよなら絵梨』の完成版だから!?」って気付いてちょっとびっくりした。で、思ったんだけど長くて退屈なのはある意味当然なんですよね。素人の映画二本分見てるようなものなんだから。でもこの漫画の意図をある程度知ったからかむしろ二度目の方が楽しく読めたまであった。

主人公が病院爆発させたの不謹慎だって怒られてたけどちゃんと理由ありましたね。母親爆発させたいって思っても不思議じゃない家庭環境っていう理由。これは”悪”の感想かもしれない。父親が「主人公は昔から爆発が好きだった」って言ってたから趣味だよね。

三回目

他の人の感想で「年老いた主人公は父親が演技していただけでは?」っていうのがあってなるほど!ってなった。昔演劇やってたって言ってましたね。あそこは裏のやり取りっぽいし本当に演劇経験者なのかも。だとしたらラストは事前に撮ったのをくっつけたのかな。

ヒロインの映画に向き合い続けた主人公が完成版『さよなら絵梨』のラストで「映画を何度も再編集していた理由が分かったからだ」って言って爆発させるの『さよなら絵梨』に不誠実ではって思ってた。だって再編集してるとき主人公は微塵も絵梨が生きているかもって思ってなかったわけじゃないですか。それなのにぽっと出の理由で締めるなんて雑過ぎる。十何年も向き合い続けた作品のラストを投げるな。

だから完成版も子供の主人公の脚本だと思う。というか、そうだったら嬉しいな。

最終的な感想

その後も何度か読み返した。

「ラストの考察次第で漫画の捉え方が全く変わるじゃん!」「この漫画が完成版『さよなら絵梨』だったんだ!」みたいな部分にドキドキはあったけど、それらを考慮しても私の感想は「退屈」だった。ありふれたストーリーと単調なコマ割りでだれてしまったし、「それにはこんな演出意図があったんです!」って言われても結局退屈であることが覆ったりもしなかった。ストーリーの退屈さを構造で挽回するのは難しい。

ラストの捉え方の正解が分からなくて悩んでたんだけど、どれが正解でも最初に感じた誤読込みでの感想がこの漫画の評価として相応しいとも思ってる。だってそれは”完成版の感想”なんだから。

あの漫画が『さよなら絵梨』を完成させるまでの物語であることを踏まえれば、完成した『さよなら絵梨』(漫画そのもの)を初めて読んだときの感想こそ大切にすべきだと思う。

 

ゆるキャン△

COMIC FUZさんでゆるキャン△全話無料キャンペーンやってたから読んだ。めちゃめちゃ面白かった!!!!!!

あの漫画の良さって全員が”個人”なところだと思う。「みんなでキャンプ行こうかな。次は一人で行こうかな」って考えてるコマとかかなり好き。それぞれやりたいことがあって、誰に言うってわけでもなく自然と次の目標を決めてるのがすごいなって思いながら読んでた。大人になるってこういうことだよね。

登場人物それぞれが常に一人で行動する選択肢を持ってるのがいい。最新話付近で大垣がソロキャンでの過ごし方を模索したりイヌ子がロードバイク始めたりしたのもよかった。

しまりんが三輪バイクに乗る話読んで三輪バイク検索しちゃった。

 

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